流星群の日-夜-
夜の学校が開放されるまで時間があるので一旦家に帰った。 くるみちゃんは元気そうで良かった。 |大河《たいが》にも・・自分の思いを伝えた。 伝えてよかった、んだよね。 |大河《たいが》は明るく振る舞ってたけど あのときの後ろ姿を思い出すと苦しくなる。 「・・・|湊《みなと》くんに伝えなくちゃ」 そう呟いて、ベッドに飛び込むと、どんどん意識が遠くなっていった。 真っ暗な視界から少しずつ、明るくなっていく。 私は|大河《たいが》とくるみちゃんと話していてお花畑にいて 笑いながら話をしている。 なんでこういうときに、こんな夢・・・。 ん? 夢・・・? 誰かが私を呼ぶ。 のーかー・・ ほーのーかー・・ 聞き慣れた声に私は目を開ける。 お母さんの姿が見える。 「お母さん!?」 「今日、夜の学校も行くんでしょ?もう夕方よ。 準備しないと間に合わないんじゃない?」 いっけない! 夜の学校でみんなと特訓するって約束してたんだった! 遅刻なんてしたら、めりの先輩に怒られるよ。 私は慌てて準備をして、そのまま学校へ走る。 幸い、学校へは間に合った。 天体観測に参加する人は中庭に集まる。 だから、誰もいない隙を狙って図書室で星座の力を使って特訓というわけ。 図書室には、|湊《みなと》くん、めりの先輩、|星華《せいか》先輩、|月華《つきか》先輩がいた。 まだ来てないのは、|流星《りゅうせい》くんとなおきくん・・と|大河《たいが》、かな。 「流星群の日でみんな中庭に集まってる今こそ特訓するわよー!」 めりの先輩はすごく張り切っている。 私がめりの先輩を見ていると、隣に|湊《みなと》くんがやってきた。 |湊《みなと》くんは優しく微笑みかけている。 「|稲荷《いなり》さん、会えて嬉しいよ。宿題は終わった?」 「|湊《みなと》くん! 私も会えて嬉しい。宿題終わったよ、めりの先輩に手伝ってもらったの」 「そっか、それなら良かった・・・けど」 |湊《みなと》くんは何か言いかけたけど「なんでもない」って目を逸らしてしまった。 |湊《みなと》くんに宿題教えてもらったこともあったから|湊《みなと》くんに聞けば良かったかな・・。 そういえば夏休みなのに会ってなかったんだ。 電話もドキドキして出来なかった。 |湊《みなと》くんに悪いことしちゃった。 けど、今はそれどころじゃない。 ・・・そう、私はどこかのタイミングで|湊《みなと》くんに告白の返事をしなければいけない。 そう考えていると、勢いよく走ってくる|流星《りゅうせい》くんと |流星《りゅうせい》くんに引っ張られているなおきくんがやってきた。 「ほのぴー!!!なおきも連れてきたよ!」 「うわーーー!!!|流星《りゅうせい》さん引っ張らないでください!」 なおきくんは、息切れしていて、|流星《りゅうせい》くんの手から離れた瞬間ぐったりとしていた。 そんな二人を見ていた|星華《せいか》先輩と|月華《つきか》先輩。 「何あのノリ」と|月華《つきか》先輩は呆れているようだった。 私はなおきくんに「大丈夫?」と声をかけると 「ええなんとか・・」となおきくんは体を起こした。 |流星《りゅうせい》くんは|月華《つきか》先輩に一目惚れしているようで |月華《つきか》先輩を見るとすごく目を輝かせる。 「|月華《つきか》先輩!!お会いできて嬉しいです!!!」 「調子に乗らないで。私たち剣道部でそこそこ強いから」 「俺、空手やってたんでやられるのは慣れてます!!」 やられるのは・・でニッコリするのはおかしいと思ったけれど そこでめげないのが|流星《りゅうせい》くんらしいなと笑いそうになった。 「メンタル強いわね、|流星《りゅうせい》」と|星華《せいか》先輩も笑っている。 「俺の太陽はあなたです、|月華《つきか》先輩!!」 「調子に乗るなら本当にシメるわよ」 「本気なんです!認めてもらうまで諦めません!」 |流星《りゅうせい》くんと|月華《つきか》先輩の温度差の激しいやり取りがしばらく続いた。 そのやり取りも終わり、めりの先輩が声を上げる。 「よーし!!特訓よ!あなたたちの力で羊たちの相手をしなさい!手加減は無用!」 めりの先輩がおひつじ座の力で 羊を使役しようとした瞬間、|湊《みなと》くんが袋を持ってみんなに呼びかける。 「あ、あの。ちょっと待って。差し入れ持ってきたんです。良かったらどうぞ」 |湊《みなと》くんの持つ袋からはラッピングされたクッキーが出てくる。 手作りとは思えないくらいクッキーもラッピングも凝っている。 「わあ!|湊《みなと》くんのクッキー、美味しいから大好きなんです、ありがとうございます」 「え!?|瀬名《せな》って女子力もあるの?そりゃモテるよなー。 って俺にもくれるの?ありがと!!優しいな、|瀬名《せな》って」 「|瀬名《せな》くんありがとう。人数分大変だったでしょう」 「|湊《みなと》、ありがとう」 「・・・ありがとう」 みんなが嬉しそうに受け取る様子を見ると、私も嬉しくなる。 「|稲荷《いなり》さんもどうぞ」 「ありがとう、|湊《みなと》くん!嬉しい」 「これは家で開けてね」 |湊《みなと》くんは私にもうひとつ袋をこっそり渡した。何が入ってるんだろう。 袋を気にする私に|湊《みなと》くんは小さな声で話しかける。 「・・・|稲荷《いなり》さん、僕に電話してないよね?」 「え?」 「どうしよう、|湊《みなと》くん怒らせちゃったかな?」 と思ったのが顔に出てしまったようで |湊《みなと》くんは「そうじゃないんだ」と前置きして話を続ける。 「僕の家、固定電話使わないことになって 僕もスマホを持つことになったんだ。 だから電話してくれてたらどうしようって思って。 教えてた番号は固定電話のだから」 「そうだったんだ。私も電話できずにいてごめんね」 「ううん。心配だったから安心したよ」 私と|湊《みなと》くんの会話が長かったこともあり めりの先輩は頬を膨らませて私達を見ている。 「せーなーくん、|稲荷《いなり》ちゃん!! 何イチャついてるのよ!本当にスクープにしちゃうわよ」 「す、すみません・・・」 私と|湊《みなと》くんがめりの先輩に謝る。 そのタイミングで|大河《たいが》が竹刀を持ってやってきた。 「特訓、俺も混ざっていい? |鏡宮《かがみや》先輩に剣道教えてもらおうと思って」 「あ、|大河《たいが》!クッキーよかったらどうぞ」 「|湊《みなと》、ありがとな!」 |大河《たいが》は昼間あったことがなかったかのようにいつも通りだった。 |湊《みなと》くんは何があったか分からない。 |大河《たいが》の|湊《みなと》くんへの接し方も変わらなかった。 私を見ても、気まずくなるとか、目を逸らすとかもなかった。 私も、いつも通りでいる努力をしよう。 友達でいて欲しいって言ったのは私だから。